マヌカハニーはニュージーランド産、オーストラリア産のどちらがよいの?
マヌカハニーの基礎知識 2023.08.02

マヌカハニーはニュージーランド産、オーストラリア産のどちらがよいの?

マヌカハニーは、ニュージーランドに自生するマヌカの木から採れるはちみつのことですが、最近オーストラリア産のマヌカハニーも見かけるようになりました。ニュージーランド産より安価で販売されていることもあります。
「マヌカの木ってオーストラリアにも生えているの?」と思った方がいるかもしれません。実は、“マヌカ”という名前を巡り、ニュージーランドとオーストラリアの間で複雑な事情があるのです。

目次

マヌカとは

マヌカとは

まず、マヌカという植物について、原産地や名称についてご紹介します。

マヌカの原産地

マヌカはフトモモ科 ネズモドキ属で、学名は「Leptospermum scoparium」、和名を「ギョリュウバイ」といいます。高さが5m前後の低木で、赤または白の小さな花を咲かせます。
植物図鑑では、分布または原産地として、オーストラリア東部やニュージーランドが記載されています。一説では、オーストラリア東部原産だったのが、何らかのかたちで数百年前にニュージーランドに広まったのではないかといわれています。

“マヌカ”という呼び名

“マヌカ”は、ニュージーランドのマオリ族が使用している、マオリ語の呼び名です。マヌカの花から集められた花蜜から採れるはちみつを、マヌカハニーといいます。
オーストラリアにある同種の木は“ジェリー・ブッシュ(Jelly Bush)と呼ばれ、花蜜はジェリー・ブッシュ・ハニーと呼ばれています。
最近、このジェリー・ブッシュ・ハニーを、オーストラリア産のマヌカハニーとして販売するメーカーが増えてきたことから、ニュージーランドとオーストラリアの間で問題が起きるようになりました。

マヌカハニーはニュージーランド生まれ

ご存じのように、マヌカハニーには抗菌成分メチルグリオキサールが含まれることから、メディカルハニー(医療用はちみつ)として、世界的で重宝されています。
マヌカハニーに、他のはちみつにはない成分(ユニーク・マヌカ・ファクター)が含まれていることを発見し、マヌカハニーそのものについて科学的な研究を続けてきたのは、ニュージーランドの研究者たちでした。ワイカト大学のピーター・モラン博士の研究チームが中心となり、マヌカハニーの格付けシステム「UMF」を確立させ、マヌカハニーの素晴らしさを伝えてきたともいえます。
その後、ドイツのトーマス・ヘンレ教授によって、ユニーク・マヌカ・ファクターの正体が抗菌成分メチルグリオキサールであることが発見されました。

マヌカハニーを巡る、ニュージーランドとオーストラリアの対立

現在、「MGO」や「Active」という言葉を用い、マヌカハニーと同様の性質を持つはちみつとして、オーストラリア産マヌカハニーが販売されています。これはどういうことなのでしょうか。

オーストラリア側の事情

オーストラリアのジェリー・ブッシュ・ハニーにも、マヌカハニーと同様にメチルグリオキサールが含まれています。そのため、オーストラリアでも、マヌカハニーという呼称を用いたはちみつが出回るようになりました。
先にご説明したように、ジェリー・ブッシュはマヌカと同種に属する木です。はちみつに含まれるメチルグリオキサールの有無がマヌカハニーを決定づける成分なら、ジェリー・ブッシュ・ハニーもマヌカハニーと同じだろうと、考えたわけですね。

ニュージーランド側の対策

ニュージーランド側からすると、オーストラリア側が商業的に成功したマヌカハニーに便乗している、と考えたのかもしれません。また、依然増え続けているマヌカハニーの偽物にも手を打つ必要がありました。
そのため、2014年、ニュージーランド政府はマヌカハニー品質保護のための研究プロジェクトを発足し、マヌカ特有の優れた性質をより詳細に特定しようとしています。

これら一連の動きは世界的にも注目され、マヌカを巡る争いとして、アメリカのウォールストリートジャーナル紙で取り上げられたほどです。

マヌカハニーとジェリー・ブッシュ・ハニーの違い

マヌカハニーとジェリー・ブッシュ・ハニーの違い

マヌカハニーとジェリー・ブッシュ・ハニーは、見た目も味も異なります。
マヌカハニーは不透明な濃い黄色をしており、とろみが強く、香りや風味がハーブっぽいという特徴があります。
一方、ジェリー・ブッシュ・ハニーは透明感のある赤っぽい色をしており、マヌカハニーほどハーブっぽさはないようです。
もともと「Leptospermum scoparium」は多くの種類があり、ニュージーランドに自生するマヌカの木とオーストラリアに自生するジェリー・ブッシュの木は、同一種というわけではありません。そのため、採れるはちみつも全く同じというわけではないのですね。

ニュージーランド産、オーストラリア産のどちらが良いの?

ここまでご紹介したお話は、結局のところ “マヌカハニー”というはちみつの定義が何であるか、つまり商標の問題といえるのかもしれません。
ニュージーランドのマヌカの花から採れたはちみつをマヌカハニーと呼ぶなら、ニュージーランド産を選んだ方が安心かもしれませんね。

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